第六号接合井 (今市と宇都宮の水道の歴史 6)

第六号接合井

 今市から宇都宮に向かって日光街道を進むと、徳次郎(とくじら)を過ぎて富谷小学校の少し先の左手に、写真のような建造物がある。

第六号接合井
宇都宮市水道 今市水系 第六号接合井

 なかなか趣のあるこの赤煉瓦の建造物、これが今回のテーマである「第六号接合井」である。ちょっと耳慣れない言葉だが、これは「だい六ごう せつごうせい」と読む。「市井の人々」と読むときに使う「井(せい)」である。

 正式名称は「宇都宮市水道 今市水系 第六号接合井」と言う。

 今回はこの第六号接合井を、その成り立ちと役割を含めて調べみたいと思う。

 今市町瀬川の取水口から宇都宮市の戸祭浄水場までは距離にしておよそ26km、標高差は240mある。このすべり台のような標高差を流れて加速する水の勢いは、日光街道の地中に通した送水管に大きなダメージを与えることは素人の我々でもなんとなく想像できる。

 そこで送水管にかかる水圧を緩和するため、標高が30m~40m下がるごとに接合井を設置することとした。

 では接合井とはいったい何なのか。接合井の原理は以下の様なものである。これは筆者が宇都宮市の水道局の方から教えて頂いたイメージを「Adobe Illustrater」を駆使して作成したものである。うまく作れた自信がある。

接合井の水の流れ

 上流から加速して流れてきた水は、一度井戸に落ちる。そこでスピードをゼロに近くして(水圧を開放するという)、水の流れを緩やかにしてから再度下流域に流す役割を持つ。これは河川や田んぼの用水路に見られる小さな滝と一緒の原理である。

 昭和24年(1949)の今市地震による被害により、当時のまま現存するのはこの第六号接合井だけである。日光街道沿いの小高い丘の上に立つ八角形の建屋は赤煉瓦と地元産の大谷石の白い隅石による構造で、平成18年(2006)、文化庁が登録有形文化財として指定している国登録有形文化財である。

第六号接合井

日光街道のその他の接合井と標高

ここで、日光街道沿いにある接合井の場所と標高を表にしてみる。

  • 今市浄水場 日光市瀬川 標高約398m
  • 第壹接合井 日光市森友 標高約360m
  • 第貳接合井 日光市森友 標高約324m
  • 第參接合井 日光市大沢町 標高約289m
  • 第四接合井 日光市山口 標高約253m
  • 第五接合井 宇都宮市石那田町 標高約218m
  • 第六接合井 宇都宮市上金井町 標高約175m
  • 戸祭配水場 宇都宮市中戸祭町 標高約158m
接合井の標高差のグラフ
宇都宮市水道の接合井の標高差のグラフ

 グラフを見ると、今市近辺は標高差が大きいので短い距離で接合井が造られているが、宇都宮に入ると穏やかな高低差のため、距離も空けて施設が造られていることがわかる。

続く。

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