塩原道(高原新湯道)2

 前回からの続きである。
 以下に当日歩いたおおまかな軌跡を貼ったが前回にもお話した通りこの道は大変危険なルートも通るため、ルートは大雑把にぼかしてある。
 もし行ってみたい人がいたら、ルートをよく知る先導者の立会のもとに入山するようにくれぐれもお願いしたい。

新湯道
高原新田宿と新湯をつなぐ新湯道(地理院地図より引用して作図)

 日光市と那須塩原市の境界にほど近い萩地蔵を出立した我々は、もみじラインから外れて高原新田宿方面に向けて斜面を下り、名も無き沢を渡る。「ここを下る」と言われたときは冗談かと思ったほど、近年に人が出入りした形跡はない。

いきなり無もなき沢を渡渉する
いきなり名も無き沢を渡渉する

 道形がうっすらと残る道を進む。その途中には目印の役割も担っていたと思われる合掌した地蔵がある。地蔵は頭部の部分が大きく欠損している。これが経年によるものなのか廃仏毀釈で行われたものかはわからないが、恐らく文政年間(1800年代前半)に安置されたものだろう。こういったものがあるお陰で間違いなく今通っている道が古道なのだととわかる。

首の欠けた地蔵

 ここからつづら折れに急な斜面を標高100メートルほど下る。下り終えると赤川が流れており、道中で一番標高が低い位置(標高1,060メートルほど)となる。
 川幅はそこそこ広く、昔は橋が架けられていというが今は無い。河原にはおそらく橋脚の跡と思われる巨大な岩があった。
 さて、橋がないため我々は渡渉することになったが、どう考えても登山靴で渡れる水深ではない。我々は近くの手頃な大きさの岩を抱えて川に投げ入れて仮の渡渉地点を作ったが、いざ岩の上に足を置くと岩がごろりと動いてしまったため、あえなくパーティ4人が4人とも渡渉に失敗して靴の中までびしょ濡れにした。悲しい出来事であった。
 ちなみにこれを今市弁では「つっぱえる」と言う。
 ここを市の境界として、那須塩原市から日光市に入る。

赤川を渡渉する
赤川を渡渉する

 その後はまた急斜面を登ることになるが、いくつかの獣道がしっかりした道形として見える。
 どうみても昔の道形と思われるものが実はハズレであったりする。山の常で間違った踏み跡を選ぶと見当違いの方向に導かれてしまうが、我々のパーティは大塚氏が先導してくれているので道迷いの心配は無用である。
 1127ピークを目指して登っていくと、途中に如意輪観音と南無阿弥陀仏供養塔がある。
 塚状にこんもりと盛り上がっており、これが天保国絵図になる一里塚の場所だと思われる。

新湯道の一里塚
塩原道に見える一里塚の印
南無阿弥陀仏供養塔
南無阿弥陀仏供養塔
如意輪観音と一里塚
塚の上に置かれた如意輪観音像

 如意輪観音像はの安永の年号(1700年代後半)と、新湯の湯泉寺、さらに高原新田宿の問屋であった大塚知義の名が見える。高原新田宿の菩提寺であった湯泉寺は新湯にあったが、明治期に廃寺となり、現在は公共浴場「寺の湯」となっている。
 供養塔はこの周囲で亡くなった人を弔うものか。

 その後も道は高原新田宿に向かって伸びていくが、道が一段高くなっているのが写真でもわかる。

塩原道
雪かきがしやすいように工夫された塩原道

 これは大雪が降る当地で、雪かきがしやすいようにと昔の人々の手で土木工事が行われたものだそうだ。

雪かきがしやすいように工夫された塩原道
雪かきがしやすいように工夫された塩原道

 道は次第になだらかになり、行く手にかすかにゴルフ場や鶏頂開拓の鹿侵入防止ネットが見えてきたらゴールは近い。
 ネットは数百メートル置きに人間が出入りできるようにゲートが設置されているが、元々誰も侵入することは無いゲートであるため中にはしっかり鍵で固められたものもある。注意が必要だ。

鶏頂開拓
鶏頂開拓に到着

 鶏頂開拓の中にも昔の道型がかすかに残っている場所もある。例えば、鶏頂開拓の西国供養塔を正面から見て右(北東方面)に伸びている道(あまり道に見えないかもしれないが)などがそれで、塩原道はここから始まって湯本塩原村まで続いているのだ。

 郷土史家・大塚建一郎氏はこの道を何度も何度も迷いながら歩き、石仏を発見したり橋脚跡、石積などの人の手が加えられた痕跡を探し当てることで、何年もかけてようやくこの古の道を特定された。
 大体において、あの取っ掛かりの急斜面を「ここかな、下ってみるか」と思われたその勘と決断力、そして細かくルートを記憶するその”山のセンス”には本当に脱帽する。
 そんな道を我々は今回、道迷いの心配を一切気にすることなく解説付きで歩くことができるという幸運に恵まれた。

 トウゴクミツバツツジが満開を迎え、新緑に映えるこの季節、毎度のことながら大塚氏には貴重な経験をさせていただいた。
 この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

トウゴクミツバツツジが満開な塩原道
トウゴクミツバツツジが満開な塩原道

コメント

タイトルとURLをコピーしました